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2020.08.03
いきいき健康教室ネット「なぜ加齢に伴って転びやすくなるのか?」【医療法人親和会 富田病院 リハビリ 愛知県 名古屋市 中川区】
富田病院リハビリテーション科、理学療法士の佐藤です。ご覧になっているみなさんの中にも、若い時に比べ、つまづきやすくなったり、転んだりする経験が増えているという方がいるかと思いますが、今日は、人は年齢を重ねるにつれて、なぜ転びやすくなるのか?ということについてお話していきたいと思います。これは一つの要素の問題だけではなく、いくつかの要素が複雑に絡み合ってバランスを崩したり転びやすくなってしまうと考えられますが、転びやすくなる主な原因についてみてみましょう。原因① 筋力低下20代をピークに、年々、特にタイプⅡ繊維という筋肉の中でも大きな力を発揮する筋線維の減少や萎縮が進みます。(加齢性の筋力・筋量低下。サルコペニア。)素早く動くことができなくなったり、体を大きく動かすことが難しくなっていきます。原因② 感覚機能低下、ボディイメージの低下自分で自分の身体がどの程度動いているか、空間の中で自分の身体がどのような姿、形になっているかなどの感覚やイメージする力が低下します。例えるならば、自分の足が思ったより上がっていなくて段差につまづいたなどは、このような機能の低下が原因かもしれません。原因③ 関節可動域の狭小化加齢に伴って、各関節の可動域は狭くなっていきます。筋肉や皮膚の硬さが増し伸長性が低下、軟骨や靭帯へのカルシウム沈着による石灰化、動脈硬化など原因は様々ですが、関節の可動範囲は狭くなり、地面と足先の間隔(トゥクリアランス)が低下するなどしてつまづきやすくなります。原因④ 姿勢の乱れ(猫背など)姿勢の乱れの中でも背中が丸くなるいわゆる猫背姿勢というのは、非常に発生しやすい姿勢変化です。背中が丸くなることで変位する重心位置を留めるために、頭部が前方に突出したり、腰が反ったりと姿勢が乱れます。特に高齢者では筋力低下や感覚機能低下、脊柱変形等が進行しており、バランスを保つために股関節戦略(ヒップストラテジー)という素早く細かい制動が苦手で大きな力を要するバランス戦略をとるため、バランスを崩しやすくなります。その他にも視力の問題など細かな個々の原因はあると思いますが、大きなところではこの辺りが原因になると考えられます。上記した問題などから、辛いですがいくら転ばないように気をつけていても、つまづきや転びやすくなることは避けられない、と考えています。しかし避けられないリスクだからこそ、対応すべき課題であると思いますので、いくつか対処法をお話しします。対処法① スリッパ・つっかけサンダルなどで出歩かない転倒事故で最も多い履物が、スリッパやつっかけサンダルなどの履物であると言われています。家の前の新聞受けまでサンダルで取りに行く、ご近所さんへ回覧板を持っていくなど、家の近辺でのちょっとした外出など油断した時に転倒は発生しやすくなりますので、少しのことでも運動靴やきちんと踵のある履物で歩かれることをおすすめします。対処法② 家の中の小さな段差や引っかかるポイントを無くす転倒事故は、先ほど申し上げた家の近所と、家の中で多く発生します。カーペットなどのわずかな段差、扇風機など家電から伸びるコンセントケーブルなどはつまづきや引っかかりによって転倒しやすいポイントです。そのようなポイントを事前に解消します。対処法③ 足首や足ゆびの機能を高める転びやすくなる原因に姿勢の乱れを挙げましたが、それに伴って足首や足のゆびのがうまく使えず、機能が低下している方が非常に多くみられます。足部の機能が高まると、素早く細かな制動が可能な足関節戦略(アンクルストラテジー)が使え、転倒しにくくなるといわれています。今回は長文になってしまいましたが、転倒は骨折などに繋がって寝たきりの原因になるなど、健康寿命を縮める非常に怖いものであります。転倒に限らず、お体のことでお困りのことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。 -
2020.07.16
いきいき健康教室ネット「肩の痛み、五十肩(四十肩)について 」【医療法人親和会 富田病院 リハビリテーション 外来】
富田病院リハビリテーション科 理学療法士の佐藤です。今日は中年期以降に発症する方が多く、腕が上がらない、肩の痛み、夜中に肩の痛みで目が覚めるなどの症状が発生する、俗に言う「五十肩(四十肩)」についてお話しします。※日本整形外科学会より江戸時代の国語辞典に「人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛むことあり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう」なんて文章が書かれていたことが由来だそうですが、50歳ぐらいに肩や腕が痛むが、ある程度の期間が過ぎれば自然に治るものを「五十肩」と呼んだそうです。そうなんです。半年や1年、長い方では2年とかけて自然治癒していく例が多いのですが、中には誤った対処法などにより、関節可動域制限や疼痛の増悪など、どんどんと症状が悪化してしまう方もいます。ですから、肩の症状でお困りの方はお早めに医療機関へ受診されることをおすすめします。そしてもう少し、注意していただきたい点も含めてお話ししますと、俗に言うこの五十肩(四十肩)、病院などで診断される際には「肩関節周囲炎」という名前で呼ばれます。この「肩関節周囲炎」という診断名も、「肩の周囲の炎症」というなんとも煮え切らない、しかし言い得て妙という診断名でして、実際には肩関節を構成する様々な組織、回旋筋腱板(ローテーターカフ)や肩峰下滑液包、上腕二頭筋長頭腱の損傷や炎症などが発生し、痛みや可動制限といった目に見える症候を出します。※日本整形外科学会よりなので「肩関節周囲炎」と一言で言っても、人によって原因や治療法は変わってきます。特に炎症期という炎症が盛んに発生している病期においては「夜間痛」という夜中の肩の痛み、寝ているだけなのに肩の痛みで目が覚めるなどの症状が出やすいことが特徴です。この炎症期に陥りがちな過ちとして多いのが、「肩を動かさないと硬くなってしまう!」と一生懸命に痛みを出しながら、ぐるぐると肩を回す運動などをしてしまうことです。関節が固まらないように、痛みを出しながらも肩や腕をぐるぐる、、、実はこれは損傷、炎症をさらに悪化させ、さらなる疼痛増悪や強い関節可動域制限を作り出す(関節が硬く固まってしまい、強い可動制限を起こす凍結肩、フローズンショルダーなどと呼ばれます)やってはいけない行為といえます。その他にもいくつか注意点がありますが、肩の症状でお困りの方は、まずはお気軽に整形外科を受診してきただき、リハビリテーションプログラムを受けられることをおすすめします。 -
2020.07.01
いきいき健康教室ネット「変形性膝関節症について」【富田病院 リハビリテーション】
今日は膝の痛みの中でも、罹患率の高い変形性膝関節症についてお話しします。変形性膝関節症の中でも9割以上の方が内反変形といういわゆるO脚変形をきたし、深いしゃがみ動作や正座が出来ない、膝の曲げ伸ばし、立ち上がり、歩き出し、階段昇降などに膝の(特に内側に出やすい)痛みが発生します。※公益社団法人 日本整形外科学会より特に体重が重い方、若い時から膝を酷使するスポーツをされていた方などは軟骨の摩耗が進んでいる方が多く、膝の変形や痛みに繋がりやすいといえます。また、坂道や段差の昇降では体重の5〜7倍ともいわれる負荷が膝にかかりますので、山岳部に住む方々の変形性膝関節症の罹患率が高いというお話まであります。膝の痛みの原因は、内側広筋という膝の内側の筋肉の筋力低下など、多くの方に共通して生じる原因はありますが、やはりその人それぞれに原因は微妙に変わってきます。少しマニアックになってしまいますが、関節水腫に伴う反射性抑制、膝関節機能障害に伴う膝関節屈曲や伸展可動制限、内転筋群の筋力低下、内側広筋と縫工筋の癒着、下腿の外旋変位、足関節や足趾機能低下などなど、膝関節に支障をきたす原因はまだまだ数多くあります。原因が変われば、対処法やトレーニングの仕方もそれぞれに変わってきます。また、同じ疾患、同じ原因で痛みが出ていたとしても、今現在の病期(その疾患の進行度や段階など)によっても行うべきトレーニングや対処法は変化します。テレビで紹介されていたから、インターネットで調べたら出てきたからと、原因や病期を無視した形での対処により、痛みや変形が悪化してしまうこともあります。やはり膝の痛みで苦痛を感じている方、お困りの方はお早めに整形外科への受診、そして理学療法士などの国家資格を有するスタッフと共にリハビリテーションプログラムを行うことをおすすめします。